情報型から体験型へ

音楽業界ってこれからどうなるの?

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情報型から体験型へ。音楽業界ってこれからどうなるの?

急激な変化が起きつつある音楽業界。これからどうなるの?一ユーザーとして、簡単に考えてみました。

THE BIG PARADE 2014

先月、THE BIG PARADEに参加してきました。

THE BIG PARADE 2014

音楽やインタラクティブに関するカンファレンスとライブ・イベントを複合させた新しいフェス。代官山エリア内の複数のライヴ・ハウス、ホールなどで同時に開催された。著名人による音楽ビジネスや未来につわるトークセッション+新人バンド見本市の複合イベント、といった感じ。アメリカでは類似のイベントとして、「SXSW」や「Red Bull Music Academy」などが開催されている。それの日本版と捉えても良いかもしれない。

イベントのレポートは各サイトで沢山レビューされているのでお任せするとして…上記の様なイベントに参加したのもそうですが、最近音楽業界について考えることが多くなってきたので、ここで普段感じていることをまとめたいと思います。正確には結論は全くまとまっていないのですが…

※本稿はあくまでも素人の個人的な意見であり、私が業界の専門家だとか、特別事情に詳しいわけでは決してございません。

「体験」がキーワード?市場の変化

まずは状況整理ということで、現在の音楽市場の状況をまとめてみました。

楽曲販売の変化

周知の通り、CDの販売は激減しています。
例えば、米国の楽曲の購入方法をシェア別にまとめると、2003年はCDシェア94.8%に対し、2013年は35%だそうです。
ここ10年でのIpodの爆発的普及により、itune等の楽曲配信サービスが急速にシェアを拡げたこと、Youtube等のストリーミング配信により、無料で音楽を聴く層が増えたこと、…
つまるところインターネットの普及が、このような変化を生んだと言えそうです。

この変化は更に進み、最近はSpotifyやMusicUnlimitedといった、定額配信サービスに注目が集まって来ています、月額1000円で数千万曲聴き放題という、普段から音楽を聴く人に対する「お得感」が人気の理由でしょうか。現在海外では急速にシェアが拡大しています。ビッグデータの活用という観点からも、今後の動向が非常に興味深いサービスです。

ライブ市場が伸びている

これまた良く言われていることですが、近年ライブ市場は拡大傾向にあり、ライブに足を運ぶお客さんが増えてきています。インターネットで画面越しの情報は直ぐ手に入るようになったからでしょうか、生の熱気・体験を求めるニーズが高まっているとも言えます。
これに伴い、ライブを中心に精力的に活動するアーティストも多くなっているそうです。

CDの販売減に反比例して増える公演数、ライブ市場は有望か?

ユーザー層の変化

次に、どのようなユーザー層がいるのか、ざっくり書いてみました。

日本ではCD主流、海外では配信主流

日本では現物主義が多いのか、CDを積極的に購入する方が多いですが(AKB等も含む)、海外では先ほどのSpotify等の普及により、配信が主流になってきています

いまだに全音楽の85%がCDで購入される、不思議な日本

現物主義が一定層いる

先程CDを積極的に購入する人が居ると言った様に、現物主義の方は多かれ少なかれいます。そして、現在このユーザー層は若干増加傾向にあります。例えば、近年レコード買う人が増えています。

音楽界の鍵。レコードの売上伸び続ける

アルバム単位で聞いている人が居る。一方で、曲単位で聞いている人が居る

昔のCDがメインの時代は、アルバムをまるまる聴くのが主流でしたが、ネットが普及してからは一曲単位で聞く人が主流になりました。
ただ、一方で、先程のライブ市場拡大もそうですが、そのアーティストに特別な思い入れがある人は、そのアーティストが考えたアルバムの構成まで感じとりたいということで、アルバムをまるまる聞く人がいます。

細分化すると更に有るのでしょうが、例えばこんな感じでしょうか。

ざっくり言えば、インターネットの拡大に伴い、販売方法が多様化、ユーザーは情報を手軽に得ることが出来るようになったが、一方でネットでは得られない「体験」を求めるユーザーが拡大してきている、と言えそうです。
このような現状に対して、今後市場はどのように変化していくのでしょうか。

WSJ 125th Anniversary journal written by Taylor Swift

つい最近話題になりましたが、テイラー・スウィフトがTHE WALL STREET JOURNALに寄稿した内容に、上記の現状に関して、アーティストの視点からそれぞれ意見を述べてくれています。

非常に分かりやすく、情熱的な文章で書かれているので、よかったらリンク先読んでみてください。

一部抜粋すると、このような感じです。 ※英訳間違ってたらスイマセン…

For Taylor Swift, the Future of Music Is a Love Story

“There are many (many) people who predict the downfall of music sales and the irrelevancy of the album as an economic entity. I am not one of them. In my opinion, the value of an album is, and will continue to be, based on the amount of heart and soul an artist has bled into a body of work, and the financial value that artists (and their labels) place on their music when it goes out into the marketplace. Piracy, file sharing and streaming have shrunk the numbers of paid album sales drastically, and every artist has handled this blow differently. ”

“多くの人が音楽販売の「滅亡」やアルバムが存在意義を失うことを予測していますが、私はそうは思いません。アルバムの価値は今後も続き、アーティストが入れ込む志や魂が礎になると考えています。アーティストや所属レーベルが市場に出す価値についても同様で、確かに海賊版やファイル共有、ストリーミングは有料のアルバム販売を激減させたけれど、アーティストたちはそれぞれ違う方法でこの変化に対応しています。”

“We will cherish every album they put out until they retire and we will play their music for our children and grandchildren. As an artist, this is the dream bond we hope to establish with our fans.

「運命の人」を見つけた気持ちにさせるアーティストがいます。私達は彼らが出す全てのアルバムを大切にし、自分の子どもや孫にその音楽を聴かせる。アーティストにとってこれはファン達と確立したい、夢の様な絆です。”

“In the YouTube generation we live in, I walked out onstage every night of my stadium tour last year knowing almost every fan had already seen the show online. To continue to show them something they had never seen before, I brought out dozens of special guest performers to sing their hits with me. My generation was raised being able to flip channels if we got bored, and we read the last page of the book when we got impatient. We want to be caught off guard, delighted, left in awe. I hope the next generation’s artists will continue to think of inventive ways of keeping their audiences on their toes, as challenging as that might be. ”

“YouTube時代の今、昨年のスタジアムツアーではほぼすべてのファンが事前にライブを視聴しています。そのことを念頭に置いて私は毎晩ステージに立っています。彼らに今までに見たことがないものを体験させるために、私はいつもスペシャルゲストを招いて彼らのヒット曲を一緒に歌います。私の世代は番組に飽きたらチャンネルを変えることができる環境で育ち、気の短い時には本の最後のページだけを読みます。常に予想外の事に喜び、驚くことを求めているのです。次世代のアーティストが、観客をわくわくさせ続けるチャレンジをし続けることを願っています。”

上記の内容は、テイラー・スウィフトがアーティストとして、業界の変化を当然肌で感じており、それに対してどのように向き合っているかを彼女なりに示したものと考えられそうです。現状の多様化する業界に対する、一つの答えの様な気がします。データを提供するというより、体験を提供する、といった感じでしょうか。

デジタルネイティブ世代へ

本サイトのテーマは「インタラクション・デザイン」ということなので、一応デザインの視点から本件に着目すると、デザインには少なくとも対象が必要なわけで、もし音楽業界に対して何かしらデザインをするのであれば、少なくともこの業界のユーザーの趣向はかなり変化しているということ、そしてそれは今後更に顕著になるということはより意識したほうが良さそうです。

その理由の一つに、テクノロジー、強いてはスマートフォン等デジタルテクノロジーの急速な進化が挙げられます。

またテイラー・スウィフトの寄稿から抜粋になりますが、

“There are a few things I have witnessed becoming obsolete in the past few years, the first being autographs. I haven’t been asked for an autograph since the invention of the iPhone with a front-facing camera. The only memento “kids these days” want is a selfie. It’s part of the new currency, which seems to be “how many followers you have on Instagram.””

“過去数年で時代遅れになったものをいくつか見てきましたが、その一つにサインが挙げられます。前面カメラ付きのiPhoneの発明以来、私はサインを求められたことは一度もありません。「今時のキッズ」が欲しがるのはセルフィーなのです。「インスタグラムに何人のフォロワーがいるか」ということが彼らにとって大切なのです。”

これはまさに、デジタル系のテクノロジーがユーザーの行動に影響を与えた、変化したわかり易い事例でしょう。
(他にもTwitterやMySpaceが影響を与えた事例とか、本文には沢山書かれています)

現状この種のテクノロジーは目を見張るスピードで進化しているので、もし音楽業界に対する、強いてはユーザーを対象としたデザインを考える機会があれば、このように既に対象とするユーザーがまるっきし変化している可能性が十分あるということ予めを念頭に置いておく必要がありそうです。(どの業界も同じですが…)

これの最たる例として、THE BIG PARADEで聞き、更に知人とも話して話題になったのですが、最近
「CDでの音楽の聞き方が分からない、一度も聴いたことがない」
というユーザーが現れているそうです。

私はアラサーのおじさんなので、CDは昔っから使い慣れていたメディアであり、今も市場で主流として流通している以上、皆が使用したことがあると思い込んでいました。
なので、それを使ったことがないユーザーがこんなにも早く現れるとは正直想定外…!

まだ人数は少ないかと思いますが、このようなデジタルネイティブ世代が今後更に、急速に増加してくるのかもしれません。そうした場合、

「CDの売上が落ちている。上げるにはどうすればよいか」

などのよくある議題は、ユーザーベースで考えた時、まるっきし意味を成さなくなることになるかもしれません。

「CDを使ったことがない人」(注:CDを使わない人ではない)

に対して、何かしらのデザインを考え無ければいけない日も、そう遠くないかも。

ということで、これから業界がどういう方向に進んでいけば良いかなどの結論は特に出せていないのですが、本稿が読者に対して、何かしら音楽業界を考えるきっかけになれば幸いです。

少なくとも筆者が言いたいことは、下記でテイラー・スウィフトが

“This moment in music is so exciting because the creative avenues an artist can explore are limitless. In this moment in music, stepping out of your comfort zone is rewarded, and sonic evolution is not only accepted…it is celebrated. The only real risk is being too afraid to take a risk at all. ”

“現在の音楽は非常にエキサイティングで、アーティストが追求できる創作の道程に限度はありません。音楽では自身が安心できるゾーンから足を踏み出すことで報償を得られ、そして音響の進化も素晴らしいものです。唯一本当のリスクは、リスクを取ること自体への恐れです。”

とも述べているように、よく音楽業界の衰退を嘆いている人が多いですが、実際はそうではなくて、今の音楽業界はある種過渡期で、これからエキサイティングな変化が起きる業界であり、この業界が好きな一個人として非常に楽しみだ、ということです。

てことで早くSpotify使ってみたい。

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