クリエイティブになるために必要な事

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クリエイティブ になるために必要な事

 こちらにきて出会ったある学生さんがとても優秀でした。なぜそんなに色々な事を知っているのか?そんな質問に対して彼は意外な答えを返してきました。人がクリエイティブになるために必要なことは必ずしもお金や設備ではないんだなと感じた話を今回は紹介します。


デザインスクールの学生とのコミュニケーション

 最近は空いている時間は積極的にInteraction Design Program(IDPコース)の学生さんともコミュニケーションをとっています。IDPの学生さんは10月からファイナルプロジェクトがはじまり、これまで学んだ事をベースに自分がやりたいことを2ヶ月間で成果としてまとめます。

 ちょうどIdeationの段階なので話かけるとインタビューに付き合って欲しいとか、テーマによっては◯◯のマテリアルについて聞きたいといってもらえることもあり、こちらも彼らのデザインの過程を直接感じたり、他の分野の人がマテリアルにどの様な関心を持っているか等が分かりとても楽しいです。

 話していると各々が自分のバックグラウンドの分野に対して哲学を持っており、何をやりたいかが明確な人が多い事も新鮮でした。一人ひとりのモチベーションの高さを感じると共に各々がユニークなテーマを提案しておりとても刺激的です。

CIIDの学生さん達に対する私の印象は

「自分で問題提起ができる人」

です。ここでいう問題定期は言葉だけで行うのではなく、それを自身のアイディアとしてどの様な形で提案していきたいか、それを検証する過程でどの様な事をおこなっていくかまでを含めています。よくそういう人達がよく集まったなと関心しました。おそらくその様な人材をセレクションしているのだと思われます。

 今回はそんなユニークがIDPの学生さんの中から最近ファイナル・プロジェクト関連でマテリアルテクノロジーを利用したいということから、よくコミュニケーションをとっている一人の学生さんの話を紹介します。


あれ、なぜこんなにできるの?

 上に紹介した学生さんと同じラボ内で仕事をしたり、ディスカッションをしているとある事に気づきました。

「あれ、ものすごく優秀かも・・・」

コミュニケーション、コンセプト創出等はもちろん、実務スキル(各種Programming,  Datavisualization,  Physical Computing, Interactiondesign…etc.)を非常に幅広く一人ですべてこなせるようでした。

 30手前になると専門性が異なる相手にはその分野では逆立ちしても勝てないというのは良くあることです。ある分野で優れている人には私もよく出会うので、そんなには驚かないのですが、彼の場合はその領域が非常に多く、久々に驚きました。

 実際に彼のポートフォリオをみせてもらうと本当に様々なプロジェクトがあり、その分野も多様でクオリティも高いと思いました。

 私は思わず、これまでどういうところで学んできたの?専門はなんだったの?と聞いてしまいました。


ユニークな能力を育てた背景は?


決して金銭面で恵まれていたわけではなかった

 「それを語るには結構昔からの話になるけどよいかい?」 といって彼は色々と教えてくれました。

 

 彼の出身地はインドの小さな村だったそうです。電気屋は一件しかなく、村でインターネットを使えるのは1件しかないインターネットカフェのみだったそうです(現在もそうらしい)。

 そんな中、彼の父親はテクノロジーをとても大切と考えており、彼が電子部品を買うことについては無条件でサポートしてくれたそうです。(ただし本当に安価な抵抗やコンデンサなどのディスクリート部品のみ)。そんな中、彼は9歳の頃からロボット作りを自分ではじめたそうです。特に先生などはいなかったが周りに聞いたり、自分で失敗しながら理論はわからないが動かし方を少しずつ学んでいったそうです。

 

彼が最初の頃につくったロボットの写真をみせてもらいました。彼は捨てられている壊れていたプリンタ等を分解し、そこからとったパーツを組み合わせて水面を移動するロボットを作っていました。

マイコンなどはないので完全にアナログな機構で動いています。手作りのリモコンもメカニカルスイッチで電気の接続を変えるというものでした。しかしそれでもきちんと水面を思ったように移動し、必要な機能をちゃんと有していました。見た目はジャンクパーツから作られているため洗練はされていないのですが、そのパーツをそこにつかうのか!という工夫が随所に見られて、また違う魅力にあふれていました。


自分で続けてきたプロジェクト

 彼はロボット作りに夢中になり、安価なマイコンを入手してからは今まで作りたくてもできなかった機能をためしたり、webにつながる環境を得てからはデータビジュアライゼーションを行ったりとその都度作りたいものを自分でつくってきたそうです。

 あとで聞いてみると彼のポートフォリオの作品の多くは大学等のプロジェクトとは関係なく、彼が自分自身で進めたものだそうです。

 そんな中、コンペで賞をとったり、いくつかのチャンスをものにしてインド有数の大学に進学し、そこで本格的にメカニカルエンジニアリングを学んだそうです。

 メカニカルエンジニアリングを学んだあとはより人との関係性等に興味をもち、エンジニアリングとデザインの両方を学べるCIIDに来たとのことでした。

 おそらく彼はいわゆるメイカーと呼ばれる人達が扱う技術の基本的な部分はすでに扱える状態かと思います。

 そんな彼がファイナル・プロジェクトとして選んだテーマが、これまでハードウェアとしての制約があってできなかったマテリアルエンジニアリングとデザインアプローチを組み合わせた新規のUI(UX)です。また新しい領域に進もうとしています。


夢中になるということ

 「なぜそんなにできるのか?」の質問の答えはとても明白でした。彼にとってテクノロジーは常に自分の興味の中心にあり常に生活の中に息づいていたものだったのです。

 きっかけは家族の影響もあったかもしれませんが、彼は内発的動機付けをもちながら99歳から続けてきたわけです。お店がない、インターネットがない、お金がない・・・といった問題は彼の情熱を止めることができなかったということです。

 私は自分がこれまで関わってきたマテリアル分野(ある意味参入障壁のある技術領域)は別として、テクノロジーという大きいカテゴリで考えた時に、彼には同じ土俵ではかなわないなと思ってしまいました。私も何もかも忘れてスノーボードに夢中になった経験があるので、なんとなく感じるのですが、「自身の情熱がはっきり定まっていて、そこに向かって突き進んでいる人には生半可な覚悟では追いつけないのです。」

 夢中になるというのは凄い事です。私の場合もスノーボードは冬しかできないと思っていましたが、いざ夢中になってみると、夏場でもあらゆる板のスペックをひたすら調べたり、ビデオをみたり、我慢できなくなって海外まで滑りにいったり、体育の授業を利用してバク転やバク宙を習得したり、それを元にプールで板をつけて練習したり・・・下り階段があれば回転したり・・・本当にくだらないと思われる事にものすごい労力を掛けられるのです。

 でも大体の人はそういう状況に長く身をおくことができないのが現状ではないでしょうか。生活があるから、付き合いがあるから・・・etc. 理由はそれぞれかとおもいます。ただ本当に夢中になっている人に勝つためにはそういう常識から逸脱しないと行けないのではないでしょうか。

大きな会社では彼ほどテクノロジーやコンセプトを作る事に集中できる人は、本当に稀なんじゃないでしょうか。多くの本来テクノロジーが好きな人達は合意形成や調整等に力を注いでいるように思います。

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(先日旅行でいったハンブルグにあるミニチュア・ワンダーランド:ジオラマに夢中になった人たちの情熱の結晶)


これからの人材について考える


優秀な人材はどんどん増える

 優秀な人材がどんどん増えることは間違いでしょう。webの発達により情報をえる敷居が下がっており、世界中のどこにいても世界最高峰の考えに触れる事ができるようになってきています。テクノロジーやそれをとりまくインフラもオープンになり、より多くの人が自由にテクノロジーに触れることができる様になっています。

 先週デンマークのある大学のFablabを訪問しました。そこでは小学生たちが当たり前のようにレーザーカッターを使い、Arduinoで自分の切り出したパーツを組み立てたロボットを動かしていました。ある小学生は学校がおわると毎日Fablabに遊びにきているそうです。彼はFablab内のすべての機器を自由自在に使えるとのことでした。

こういった人達が増える中で、日本や大きな企業に求められる役割もまた変化していくでしょう。その変化に対応できなければ相対的に私達は厳しい状況になることは容易に想像できます・・・


日本の特殊な環境

 私自身もあまり考えたことがなかったのですが、こういう状況を外からみてみると、日本は環境的には恵まれている部分とそうでない部分が混在している様にかんじます。

インターネットのインフラが整っており、テクノロジーに関するドキュメントやイベントが豊富な事はとても恵まれていると思います。最近ではメイカーズムーブメントも少しずつ盛り上がってきているように感じます。国としてのインフラが整っている一方で、個人が情熱を燃やし続ける事にブレーキをかける要因が多いように感じます(まあそんなの関係なしに突き進むひとはもちろんいるとおもうのですが・・・)。

 例えば娯楽は多いので、無理に自分で何かを作らなくても楽しく過ごせてしまう・・・。出る杭は打たれるの文化・・・・etc.

 文化的な面はチームワークを発揮する上で有力に働く面もあるので一概には言えませんが個人の情熱を伸ばすような環境がもっと増えるといいなと私は思います。


箱としての会社の限界

 今回紹介した学生さんに今後のキャリアをどう考えているのか、興味本位で聞いてみました。彼は次の様なことをいっていました。

 自分にとって一番大切なことは、本当に自分が面白いと感じるモノを作る活動にかかわれるかどうかなんだ。

 もちろんお金は必要ですがそれがファーストプライオリティではないことは明確でした。彼にとっては自分で何かをつくるというもっとも大切な行為はある程度のお金さえ確保できていればできる事で、技術をやる場所として会社という箱に頼らなくてもそれは叶えられるという考えをもっていました。

 昔は技術をやりたい人は設備等のしばりもあり会社に入らないと社会にインパクトを与えることは難しかったでしょう。いまではその状況は変わりつつあり、1つずつのパーツを自分でつくりそのアイディアを世界に公開できる状況です。

 そんな状況では本当に尖った情熱をもった人を、給料とか会社の安定性といったもので惹きつけることはより困難になってくるでしょう。

 逆にいえば彼らはそういった要求を満たせるならば会社という場所に魅力を感じるのではないでしょうか。(給与をもらえて、優秀な人が集まっていればネットワーキングもより容易にできる、スケールアップが容易になる等メリットも多いとおもいます.) 

 会社(特に大きな会社で技術を扱う場所)が今後社会で価値を提示していくには本当に個人ではできないようなテーマに取り組む、能力のある人の尖ったアイディアをwin-winの形でサポートしていくといったことがより求められるとおもいます。


これから

 今回の彼の話は自分にとっては本当に衝撃的でした。環境を言い訳にしていちゃいけないなと強く感じました。あの雪山の情熱を思い出さねば・・・・ 私自身も夢中にテクノロジーとデザインに向かい合って濃い時間を過ごしたいとおもいます。明日もラボで色々と遊んでみよう・・・・それではみなさんおやすみなさい。

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