デザイン思考が近年注目されている理由

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多くの業界から注目を集めているデザイン

Business design

最近、デザインが従来にも増して、多くの産業から注目を集めています。

最近のWiredの記事によると2009年の会計ソフト大手のIntuite社が各金融機関の口座を集約した個人向けの会計ソフトを提供していたMint社を買収したことがターニングポイントとなり、テクノロジーにとってデザインがより重要視されるようになったと言われています。

記憶に新しいところでは、昨年GoogleがプロダクトデザインのGecko Designを買収しました。

また今年に入ってからもこの流れは留まる事がなく、FacebookがデザインファームのTeehan and Laxを買収しています。金融業界ではBBVAがSan Fransisco のUX Design FirmのSpring Studioを買収しました

企業の買収以外にも、Airbnb, Pinterest, Nestといった近年話題になった企業の創業者(or Co-founder)がデザイナーであった事も多くの人にインパクトを与えました。

Designcompany

デザイナーによる近年の顕著なビジネス例

この様な経緯もあってか、近年デザインの世界に注目が集まり、彼らの思考法、プロセスを用いたデザイン思考という言葉が、色々な場面で聞かれる様になってきました。

しかし、なぜそもそもデザインファームが企業に買収されたり、デザイナーの起業家が大きな成功を収めているのでしょうか。この部分を少し掘り下げてみたいと思います。

この記事について

デザイン思考自体は古くからあるものですが、最近急激に流行りだした様に感じています。そのため、注目度は高まっていますが、デザイナー以外の実践経験者が少なく、言葉のみがやや先行している様に感じております。

この記事では、最近良く巷でも使われはじめたデザイン思考がどの様な背景から必要性が認識されてきたかについて、実際にこのプロセスを学ぶためにデザインスタジオで活動しいる者の視点から私見を書きたいと思います。

また、別の記事でデザインプロセスのより具体的な中身や実際に導入する際に課題になると思われる内容を紹介していきたいと思います。

現在デザインプロセスに興味を持たれている方、実際にこれらのプロセスの導入を試みていらっしゃる方に少しでも参考になれば幸いです。


「デザイン」 と “Design”

デザイン design

はじめにデザインという言葉について簡単に触れたいと思います。デザインというと日本では綺麗なグラフィックや色彩、そして形等といった見た目に関する要素を連想される方が多いのではないでしょうか。

しかし、多くの企業が注目しているデザインは見た目だけを表すのではなく、より広義の意味で使われています。これを本エントリー中では”Design”と区別して呼ぶことにします。

Designの定義は専門家に聞いても文脈により微妙にニュアンスが異なる難しい問題です。

本エントリーでは次の様に定義します。

”特定の制約条件のもとで「問題を発見する事」そして、それを解決する一連の活動の価値を最大化するための具体的かつ実現可能なソリューションを生み出す事”

つまり、ある特定のシーンにおいて誰か(対象)の問題を発見し、その人(+そのステークホルダー)にとって、その問題解決のプロセスと支払う対価を含めた価値が最大になるような実現可能な解をみつけるということです。

上のデザインは取り組むべきシーンや対象が具体的である事が大切です。例えば、水を飲む道具が欲しいという抽象度の場合、紙コップでもロイヤルコペンハーゲンの高級コップでも問題は解決できます。

しかし、どちらのコップが正解か?と考えるとそれがどの様なシーンであるか、対象者が誰であるかによってより正しい選択肢は変化します。この様にただの問題解決ではなく、具体的なシーン、対象に対してその価値を最大化させるという部分が1つのポイントだと思います。

デザインの定義についてさらに興味の有る方は下のリンク等もご参照ください。

Small Talk | Kyoto University Design School – Collaborative Graduate Program in Design

デザインとは何か? |

それでは何故”Design”が注目を集めているか、歴史的背景を振り返りながら考えてみたいと思います。

ものづくりの歴史を振り返る

History for making 04

Design とクラフトマンシップ

Designは決して新しい概念ではありません。歴史を振り返ってみると人々は生活に必要なものを作っていました(クラフトマンシップ)。これらは言ってみれば問題解決のためのツールであり、日々の生活の中で改善、洗練されていったものです。(アート等のより自己表現に近い活動は別に存在します)

例えば、身の回りにある食器、傘、家具は材料等の進化はあれど基本的な機能や形はほとんどかわりません。それだけ良くデザインされたプロダクトといえるでしょう。

つまり人々のものづくりは元々Designと強く紐付いた活動でした。しかし、19世紀半ばよりこの状況は変化していきます。

産業革命によるパラダイムシフト

19世紀半ば、化学、電気、石油、鉄鋼の分野の技術が進化しました。その結果、食料、衣服、等の製造の機械化と、輸送の手段が急激に整備されていきました。

これらの環境の変化従来では不可能であった物の大量生産、大量消費を可能にしていきました。技術は進化を続け、私達は手作りでは到底、個人で入手できない車を購入できる様になったり、高品質の衣服を安価で手に入れられる様になりました。

実際に日本は戦後の高度経済成長期にこの大量生産のモデルに適したオペレーション法を確立し、経済大国へと成長していきました。

大量生産の裏で

この様なパラダイム・シフトを経た後も、従来のデザイン志向のものづくりも続いてきました。そして、時にこれらの2つのアプローチは衝突しました。

オペレーションの変化の波に乗らなかった商品は作れる量が少なく、割高であるため、よりニッチな領域に向かうか、嗜好品としての意味合いがより強くなりました。

例えば、スイスを始めとする機械式の時計は、セイコー社によるクオーツ時計の発明により大きな打撃を受けました。この技術革新により圧倒的安い値段でより精度の高い時計が作られる様になりました。
しかし、時代と共に時計は単なる時間確認のツールとしてではなく、ファッションアイテムとしての意味合いが認められ、現在も産業として成立しています。

この様に2つのアプローチは時に競合しながらもそれぞれ発展していきました。

新たなパラダイムシフトが起き始めている?

そして、最近になり新たなパラダイムシフトが起きはじめています。少ない人数のチームやオープンコミュニティがイノベーションをリードするという現象が起き始めました。

この変化が現在多くの人達がデザイン思考に注目する原動力になっているとおもいます(詳細は後述)。

これには様々な理由があるかと思いますが、下の様な環境変化が主な原因ではないでしょうか。

  • オープンソースコミュニティによる情報共有、プラットフォームの公開
  • 大企業の垂直統合から水平レイヤーマスターへの立ち位置の変化(デバイスのモジュール化、PaaSの発展等)
  • ODM,OEMの発展
  • Digital Fabrication Toolの発展
  • Cloud Foundingシステムの出現
  • Cloud Sourcingの出現
  • 物流プラットフォームの発展

これらの技術やサービスの発展により少人数のチームがアイディアを形にすることを可能になりました。

問題が容易に定義できない時代

問題解決から問題発見へ

それではデザイン思考と呼ばれるデザイナーの考え方やそのアプローチが何故現在注目されてきているかについて、もう少し考えてみたいと思います。

この100年以上の間、産業の中心はオペレーションの改善に向いていました。そのときは、Designも重要ですがよりはっきりした命題が常に存在していました。

それはより安価な●●であったり、☓☓の性能を満たした・・・といった風に表現されるものです。(言い換えるとそれを達成すると必ず利益につながる指標)

しかし、製品の価格や性能が向上するにつれて製品は人々の基本的な要求は満たされる様になってきました。

(参考文献)

時には、多少性能は低下しても、より安価にソリューションを提供できる技術が採用される様になりました。また先の時計の例の様により感性的な価値が評価される事も増えてきました。

そして、時にはユーザーのより大きな要求に答える様なソリューションを提供する事で、従来のハードウェアの性能とは異なる部分でイノベーションが起きるようになってきました(例:Apple社のiPod+iTunes
等)

つまり、現在は単一の明確な手法を追いかけるだけではなく、ユーザーのより複雑化した要求を理解する事が必要になってきたのではないでしょうか。

そしてこの様な活動は上に述べた先ほどの変化の中で少人数でも起こせる可能性がでてきました。そのため企業内外問わず、より多くの人が問題発見をする能力を鍛えたいと思うようになってきました。

企業の変化

この様な時代の流れに伴い、企業も従来の大量生産、大量消費や垂直統合型とは違うアプローチをとる例が増えています。

Google

代表的なところではGoogleは世界の情報を整理する事を命題にかかげ、広告で収入を得るモデルを構築し、一般のエンドユーザーには無料で自社のサービスの一部を公開しました。

Googleは検索やメールサービスだけではなく、スマートフォンの領域においてもLinuxをベースとしたAndroidの開発環境を公開することでプラットフォーマーとなり発展しています。

Intel

ハードウェアの会社でもIntelは個人が電子機器を制作できるようなチップセットやAPIを公開しはじめました。ユーザー参加型で自社の商品が売れる新たなマーケットを探すという新しいアプローチです。
実際にIntelはMake it Wearableといったハッカソンイベントを企画し、アイディアを集めると同時にそれらに積極的に投資をすることで自社のビジネスを発展させようとしています。

Intel| Make it Wearable Challenge

Gopro

新規プレイヤーも登場してきました。今回の記事でまだ挙げていないところですと、Goproも注目するべき企業かと思います。これは有名な逸話ですがGoproの創業者のニック・ウッド万はサーフィンが大好きな起業家でした。彼はその前に何度か起業に失敗していますが、サーフィンの撮影に異常な熱意を持っていた彼は、5年の月日を経てGoproを完成させて大きな成功を収めます。

彼は意図的にデザイン思考を使ったというわけではないでしょうが、自分自身が商品の対象であったために、顧客没入とも言える状態で商品を開発したことでより深い問題を発見する事ができた事は、大きな成功要因の1つだったのではないでしょうか。

問題発見能力が求められている

この様に、多くの企業が問題解決の手法を探している様に思います。会社によって、強力なビジョナリーが引っ張ったり、ユーザー参加型のプロセスを組み入れたり、多角化してみたり・・・etc.と皆苦心しながら探索しています。

その中の1つとして、問題解決のプロフェッショナルとしてのデザイナーと彼らのプロセスが現在再び注目されているのではないでしょうか。

そしてデザイン思考が本当に企業で活用され、広がっていくかはまさにこれからの成果次第かとおもいます。

最後にデザイン思考の領域でリーダー的存在であるIDEOのティム・ブラウン氏のTED Talksを紹介します。今回のエントリーに関連した内容が述べられているので興味の有る方はぜひ御覧ください。

ティム・ブラウン|デザイナーはもっと大きく考えるべきだ

おすすめ文献

また時間があれば、もう少し具体的なデザインのプロセスや、実際に導入する際に生じるであろう課題などについて考えた事を書いてみたいと思います。

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