ニーズとシーズのジレンマ

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前回のポストでは企業研究所の活動の一部と、特に新機能を有する材料を開発する際に生じるいくつかの課題についてシェアさせていただきました。

企業研究所の活動と課題

今回はその課題の中から

新機能と顧客価値を結びつけ、周囲を納得させる事
 

について書いてみたいとおもいます。

これはいわゆる”ニーズ”と”シーズ”に関する話題です。

企業の研究の多くは、あるニーズ(要求)に対してそれを満たす様なソリューションを探索します。この様な研究はいわゆるニーズドリブンと呼ばれ、良く行われるのではないでしょうか。

しかし、研究というフェイズでやることの多くは未知の領域であるため、ある種の”予測や仮定”のもと進めることになります。

この仮定が正しければニーズを満たす素晴らしい材料やデバイスができあがるのですが、大抵の場合は予想の特性とは異なった部分を持つのが一般的です。

すると最初の用途に使えないユニークな特徴をもった材料、あるいは使えない材料等が残ります。

後者の場合は別のテーマを始める等の選択肢もありますが、後者の場合はとても悩ましい事になります。つまりその材料がもつ”機能”を”顧客価値”につなげる必要があります。

よくあるパターンは自分たちでアイディアを出しあい、想定顧客に相談にいくというパターンです。優れた物の場合はそこで顧客が見つかり、多少の方向転換はあってもなんとか新しいニーズに向けて進めることができます。

しかし、この段階でよい使い道が見つからないとその技術はお蔵入りになるケースが多いとおもいます。特に企業の研究所はこの様な中間成果物を世に公開しない場合も多いため、日の目を浴びず消えていくケースもあるでしょう。

私が最近感じることは、この様な”シーズ”を得た場合に、それを既存の応用例という枠に当てはめニーズを検証するだけではなく、新たなニーズを発見する活動にもう少し力をいれるべきかと思います。

最近話題になりましたが、信越化学工業株式会社様は従来BtoB向けに開発を行っていたシリコーンというゴム材料を柔らかいコップに活用することで話題を集めました。

信越シリコーン|ニュース
落としても割れない ガラスのようなのに柔らかい、 新感覚のシリコーンゴム製コップ&グラス …
飲み物を飲むときに欠かせないコップやグラス。シリコーンゴム製のキッチンウェアはシリコーンゴム製なのに柔らかく、外観はガラス製そのもの。

彼らはニーズドリブンで進めてきたかと想像します。おそらく最初からコップを想定していたというよりは本来の開発に加えて、途中で自身のシーズからアプリを見つけたのだと思います。

この様な商品は最初からそこをターゲットにするのは、既存の製品ではない分難しいと思います(売上の予測を立てづらいため)。一方で新しいビジネス領域、差異化を生み出す原動力にもなるのではないでしょうか。

この様なシーズにぶつかる可能性が高いのがエンジニアだと思います。その時に新しい島を見つけるためには”新機能”と”顧客価値”を結びつけ、周囲を動かす力かと思います。

そのためには不確実なニーズを証明する仮説検証型のアプローチが必要になるのではないでしょうか。今後も事例等を調べながらこのジレンマをいかにうまく取り扱っていけるか考えていきたいとおもいます。

いわゆる仮説検証型の手法を提唱し話題になった本、今後もう少し事例が集まってくるのではないかと楽しみにしています。

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