研究テーマ 創出に重要な3つの視点

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Research

 

研究テーマ を決める事は研究者にとって最も重要な仕事の1つと言えるのではないでしょうか。

研究はある特定の物事について事実を深く追求していくため、どのような問題設定をするかによりアウトプットの方向性がかなり決まってきます。

私自身は研究の世界に入って、気がつけば早くも10年くらい経ちましたが、未だに非常に大きな課題です。

エンジニアリング、デザイン、ビジネスと道半ばですが色々と経験してきた節目の時期なので、自分なりに研究テーマを創るという事についての考えをまとめてみたいと思います。

デザインスクールへの留学時には、問題発見(設定)のスキルを向上させる事も目的に一つでしたが、そこからどんな気づきを得たかについても少し記載してみます。



研究テーマ を考える前に

研究テーマを考える前に、、研究の目的について少し考えてみたいと思います。これは“研究テーマの目的”ではなく、”研究をする人の目的”と”研究をサポートする人達の目的”についてです。

ひとえに研究といっても、例えば企業での技術開発研究、社会学の研究、夏休みの自由研究、はたまたスポーツの上達に関する研究等色々なカテゴリが存在します。

研究自体は”行為”であるので、そもそもなぜ研究をするかについて自分なりのスタンスを決めておくのは必要ではないでしょうか(行為そのものが目的の人もいるかもしれません)。
私個人は”テクノロジーを活用して、ユーザー(自分含む)がよりワクワクできる体験を作る事”を目指しています。もう少しスコープを絞ると”機能性材料と人の新しいインタラクションを探求するHuman Material Interactionを探求する事”に興味を持っています。

また活動を支援している企業はその研究に投資した資金が、組織の利益として回収されることを当然期待しています。

個人の情熱とその活動をサポートしているステークホルダーのモチベーションを上手く理解した上で、研究テーマは決められるとより骨太なテーマになると実感しています。

良い研究テーマに共通する3つの要素

私自身はまだ中堅に足をかけ始めた程度の研究者ですが、これまでに色々なプロジェクトに関わったり、側でみてきました。

その中で、光るテーマというのは下の3つの要素を持っていると感じています。

Researchdiagram

(研究テーマを支える3つの要素)


革新性

Disruption

 

研究の成果が(ある特定の)「対象者に新しい物事の捉え方や有用なソリューションを提供できるか」という部分に該当します。

変化が大きい(破壊的なもの)程、インパクトは大きいです。同時にその命題に興味を持っている人(あるいは潜在的に持ちうる人)が存在するかどうかもポイントかと思います。

通常はこの様な背景を理解するために先行研究や技術のサーベイを行うケースが多いでしょう。

H指数(※)が化学者の中でも最高クラスのH指数を誇るHarvard Universityの教授 G.M. Whitesides教授は2004年にAdvanced Materialsという雑誌に”Whitesides’ Group: Writing a Paper“という記事でScientific な論文を書くときには最初に次の様なポイントを踏まえて、アウトライン(研究計画書)を作る事を薦めています。

(※:H指数・・・ざっくりいうと沢山引用される論文をどの程度だしたかを表す指標。研究領域における影響度を評価する際の参考になります。分野毎にも差異があるので注意, 詳細はWikipediaの記事をご参照ください。)

全体の主な構成は3パートから構成されています。

1.Introduction

何故その仕事をしたか。(Why)

何がその仕事の最も大きな動機か、仮説は何か?(What)

2.Result and Discussion

結果は何か。

どのように実験、評価を行ったか。 (How)

3.Conclusion

何が得られたか?

なんの仮説が証明あるいは棄却されたか。

何が違いを生み出したか。

友人が彼のグループに留学していましたが、実際にこのようなアウトラインを作り十分にディスカッションを行ってから研究を進めているそうです。優れた成果を上げている研究グループは多かれ少なかれ似たような要素を持っているのではないでしょうか。

(さらに細かいチェックポイントは沢山あるのですがこのあたりは興味のある人はぜひ原文を当ってみてください。)

上の例はかなりファンダメンタルな研究を行っているラボのケースを紹介しました。

インタラクションデザインの様な領域ではどうでしょうか?

ひとえにインタラクションと括っても0ベースで考えるケースや、Human Centered Designの様に人間中心にOpportunity Areaを特定し、コンセプト化、プロトタイプ検証と行っていく場合等も存在します。

前者はサーベイと様々な視点(アイディアに対する反論と弁証)から掘り下げていくようなアプローチという点では、ある意味上で紹介したWhitesides Groupに方法に似ている様に思います。

一方で、後者は問題発見そのもの自体にも価値があるので、検証プロセス自体も成果になるでしょう。しかし、この場合は仮説から導かれたソリューションが必ずしも自分達の研究Gp特有の技術的な解としてあらわれるとは限らないので、①上手く強みと整合させる、②適切なチームを構成しファシリテーションする、③ストーリーとして伝える能力等が必要になってきます。

実際にデザインスクールではこれらのスキルが高い人が多かったように思います。また強力な強みを持つ人は①で大きなインパクトを出せるケースもあるので、上手く尖った人材が集まると面白いアウトプットが出やすくなるかもしれません。

 

持続性

Viability
持続性は「研究活動成果がいかに持続的に利益をもたらすか」という視点です。

これは意見が分かれるところもあるかと思いますが、私見を書きたいと思います。

私の様な企業の研究者の場合、研究のアウトプットが組織の利益につながることを期待されます。

そのため、研究成果が投資に見合うかという視点で常に評価されます。(大学等でも直接の金銭価値かどうかは別として論文投稿数等の形で評価されている事でしょう。)

特に投資額が大きいテーマは、一つの成果を出して終了だと投資回収が難しくなるので、その結果をどういう風に広げ、インパクトを大きくしていくかの長期ビジョンも重要になります。

研究にはそれなりに時間がかかるので、毎回0リセットするのではなく、そこで得られた知見が他の領域に繋がったり、別技術の発展に寄与するなど研究開発テーマの将来像の広がりを描くことが企業等では特に求められます。

大学で研究室に配属された後、具体的なテーマを与える研究室は、リーダーの教授がそのようなグランドデザインを持っているケースが多いと推察します。

現在は不連続変化が起きやすい時代です。そのため、持続性の観点ではテーマに対する深い専門性はもちろんですが、常に世の中の動向や他の技術との関係性についてアンテナを張り、テーマの価値を上手く伝える事もますます重要になるのではないでしょうか。

デザインの観点でみるとどうでしょうか。HCD(Human Centered Design)の場合、デザイナーは特定のコンテクストを調べ、そのユーザーを取り巻くシステムについての理解を深めていきます。

そのため、一般的なデザインスキルだけではなく、そのコンテクストに対する理解自体もそのデザイナーの専門性になっていきます。

デザインプロジェクトはコンセプトに仮説を内包する事も多いため、いきなり大きな金額で○○をやります!というのは中々ハードルが高いのではないでしょうか。

過去のデザインテーマから、上手く事実を引きだし、次のテーマに続けていくといったアプローチも有効だと思います。この様に積み重ねていく事でアウトプットに対する共通理解が形成され、アピールの場所も増える事で技術の導入の敷居が下がり、革新性をより高める事に繋がるのではないでしょうか。

(デザインファーム等では色々なプロジェクトに関われる事が強みになる一方で、やはり特定の得意なデザインフィールドを持つという事を求めている方もいらっしゃいました。)

情熱

情熱

3つ目の要素としては、「研究テーマに対する熱い思い」を項目としてあげてみます。

いきなり精神論かと思われるかもしれませんが、結局成果がでるかの別れ目はここなのかなと思います。

研究は分かっていない事を解明する活動なので基本的に色々と労力がかかります。

朝から晩までずっと実験する日々が数か月続いて、なんの結果もでないという事もあります。

例えるなら毎週やりこんだドラクエのデータが消える感じです。(10時間×5日計算) 完全に仕事と割り切るか、内発的動機付けなしでは乗り越えるのは困難です。(まあ実際には、その条件ではNGという結果が得られており、探索範囲が狭まっているので進捗しているのですが・・・)

これを乗り越えるには研究テーマの成果がどれだけ大きな意味を持つのか、研究者自身が腹落ちし、時には妄執するような事も必要かもしれません。

特にテーマのリーダーには、情熱をチームに伝播させる能力も重要な資質になるでしょう。

私はこれまでに何名かPure Scientistと呼べるような人に会い、仕事をした経験があります。彼らは概して研究に夢中になっており、そのトピックに対して活動をしている時は全てを忘れて夢中で何時間も取り組めるような人達でした(本当に食事をする事も忘れる様な感じです)。

それではPure Designerと呼ばれる人はどんな人達なのでしょうか。私はDesignerと呼ばれる人とはこれまで交流がなかったのであまりイメージできていなかったのですが、留学先のResearch部門には結構変り者がいました。

ユーザーリサーチの時はインタビューワとして普通に会話をしているのでわからないのですが、インタビュービデオの定性データ分析をしている時や、プロトタイプを行っている時は上で述べたPure Scientistの様にすごい集中力で仕事をしていました。

どうも話をしていくとシステムを分析していく中で見えていなかった切り口を見つけたり、稲妻のように走るアイディアを捻出できたとき、対象のユーザーに良いソリューションを提供できたとき等に彼らは喜びややりがいを感じているようでした。

まとめ

仕事柄あまり具体的な内容は書けませんでしたが、これまでに感じた事についてまとめてみました。実際には状況に合わせてこの内容は「デザインアプローチが活きそうだ」とか「技術のベンチマークや分析をきちんとやるべき」と色々なシーンに出会います。

今はいわゆるTraditionalなテーマアップの手法とデザインアプローチの方法等が結構別に語られているケースや決まった組合わせで語られているケースが多い様に感じます。今後はこれらの手法はもっと色々なケースが現れて、条件に合わせて上手く組みかえていくことが求めらえる時代になってくるのではないかと予想しています。

最近はどたばたしておりほとんど更新できていないのですがまた時間があれば対象スコープや時間軸を元にどのようなシーンにどういう手法がはまりそうかといった自分なりの分析を書いてみたいと思います。

 

 

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