デザイン留学を終えて

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ご無沙汰しております。最近はめっきり更新できておりませんでしたが、
9月に帰国して以来、慌ただしい日々を送っておりました。やっと年末年始で一息つけるようになったので、簡単に留学の様子を振り返りたいと思います。

デザインスクール留学の振り返り

ずっと技術畑にいた自分がデザイン分野に留学するという事でどうなるか心配でしたが、なんとか無事に一年間のプログラムを終える事ができました。

何が得られたかについて自分の振り返りと、同分野に興味のある人の参考のために書いてみたいと思います。

プログラムの概要について

私の場合は一年のカリキュラムに参加するのではなく、訪問研究員としての滞在でした。そのため、留学中のプログラムは留学先と相談しながらかなり希望に沿った形で組むことができました。

最初に3ヶ月はOJTの形式で実際にデザインファームで働いているメンバーと一緒にフィールドワークやリサーチを行いました。企業から来ていたのでコンサルティング案件は参加できませんでしたが、留学先のCIIDはEUプロジェクトに参加していたため、企業や学校といった様々な場所を訪問しながら、彼らの仕事の進め方を体験することができました。

またこの期間にファイナルプロジェクトといって一年間学んだ学生さん達の最終プロジェクトにも一部参加させてもらい、多くのケースに触れる事ができました。

興味深かったことは、同じデザインスクールで一年学んだメンバーが誰一人として同じようなデザインプロセスを経なかったという事でしょうか。今になってみると当たり前に感じるのですが
プロジェクトの目的や調査コンテクスト、時間、様々なファクターによりプロセス自体を自ら設計する必要があります。一年間実プログラムを通じて学んできた学生さんたちはこれらの経験を活かして、上手く形にまとめていたと思います。実際にWiredといった雑誌等に掲載されたものや論文誌に掲載されるといった形で成果を残せた学生さんもいらっしゃいました。

次の三ヶ月は自分のテーマを立ちあげつつも、デザインやプロトタイプに関するスキルを授業やワークショップを通じて学んでいました。この期間もインプットの続きであったと思います。

丁度新しい年度の学生さんが入ってきたので、Interaction Designの入門やPeople Centered Design、Physical Computing等に参加しました。またMaterial Electronics や Secret Life of Objectといったクラスでは一部講師もさせていただきました。 エンジニア畑の人間としては、材料分野についてもデザイン専攻の学生さんが興味深く話を聞いてくれた事は嬉しかったと同時に、この分野とインタラクションの融合はまだまだ可能性がある領域だなと改めて思いました。

途中で3週間程度、RCA(Royal College of Art)の博士課程コースの学生達からSpeculative Designのワークショップを開催してくださいました。CIIDの卒業生達と一緒に参加させてもらいましたが不確実な未来に対して、様々な視点から未来を描きストーリーを語り、議論しあうという体験をする事ができました。これは普段のPeople Centered Designとはまた異なるスキルセットが要求されましたが、こういう機会があったのも思わぬ収穫でした。

後半の半年は自分で定めた領域に対してリサーチやコンセプトメイキングを行うというアウトプットの期間でした。

多分失敗するから複数の領域からスタートしてご覧というCEOのSimonaのアドバイスにしたがって、3つのコンテクストに対して、課題発見のフェイズからはじめました。

紆余曲折を経て、途中でテーマを絞ったり、プロトタイプによる仮説検証で挫折したりしながら、最後は1つのネタをなんとかまとめました。途中で行き詰まった時はResearchのメンバーは勿論ですが、IDP(Interaction Design Program)の学生さんやConsulting部門のメンバーも相談にのっていただける、大変よい環境だったと思います。

特に定性データ分析やワークショップのファシリテーションについてはかなり助けられました。この辺りは書物だけでは学び辛いところなので、留学先にCIIDを選んだ価値が最もあった部分の1つかとも思っています。

成果について

まだ内容が公開されていないので詳細は割愛しますが、Makersコミュニティ向けのプロトタイピングツールを開発しました。

帰国数日前までビデオドキュメンテーションをしている位追い込まれましたが、なんとか国際会議に投稿できました。幸いにもインタラクション分野では
それなりに名のしれている会議の査読に通り、来月発表する予定です。

これまでに論文、国際会議、特許といった内容は一通り経験しておりましたが、コンテクスト分析、コンセプト創出、プロトタイプ検証を含めて完全に0から行ったのは今回が初めてでした。

また、CIIDはいわゆるFablabとしては最小限の設備は整っていますが、スペシャルな機器はほとんどない状況で、ビーカーの代わりに紙コップを使ったり、撹拌機や恒温槽も無いという材料系の人間からすると
かなり過酷な状況でした。そんな中、材料はほとんどホビーショップ、実験器具は文房具とキッチン用品という普段の会社の環境に比べると全く異なる制約条件で取り組むことになりました。

こういう状況だったので、有名大学や企業でも難しい様な学会に通すのは正直不可能かと思っていました。

結果をみると、CIIDのコア・コンピタンスであるデザインはインタラクションの分野ではその価値がきちんとレビュアーに認知されている事を感じました。また、非デザイナの人間でも実際に彼らと一緒に過ごす事でそれを再現できたということは1つの自信になりました。(課題は色々とのこっていますが・・・)

もう一つ形?として残ったものは全く新しい人脈です。小さい組織のためCIIDのメンバーは勿論ですが、ゲストとして外部からいらっしゃる様々な方とつながる事ができました。

こういった人脈は学ぶ内容と同じくらい重要なものかと思いますので、今後留学される方はデザイン分野にかかわらずぜひとも生活を楽しみながらつながりの輪を広げられるとよいかと思います。

またこのブログの当初の目的であったInteraction Designやデザイン思考といった分野に興味のある人の輪を広げるという目的も向こうでの生活とこのブログを通して多少なりとも達成できたと思っています。

他にも学んだ事

日本を離れて一年間を海外で過ごすというのは今回が初めてでした(これまではせいぜい2ヶ月)。そのため、一年を通して現地の文化に触れることができ、観光以外の普通の生活や彼らの価値観に触れることができました。

意外と自分が思っている当たり前ってそうでもないんだなと知ることができ、今までよりある意味肩の力を抜いて過ごせる様になったと思います。(かっこよく言えば、キャパが大きくなったとも言えますし、前からの知り合いから見るとやや適当になった様に思われるかもしれません・・・)

デザインプロセスのリアルな場面を色々と見られたのは貴重な体験になりました。デザイン思考が注目を集めており、様々なやり方が書物等を通じて共有されつつありますが、実際に有効に活用するためには色々な要素がある事を痛感した一年でした。

デザインファームのメンバーがどの様な点にまで配慮しているのか、どれくらいの時間を掛けて定性データを分析しているのか、どうやって意思決定をしているのか、プロトタイプの要件や見せ方・・・etc.と様々な部分にある種のノウハウを感じました。

技術に関しては正直個人的に学べるところが多そうでしたが、異なる専門性を持つ分野のメンバーと連携して限られた時間の中でアウトプットを出すという割と泥臭い部分については今後も必要になる要素になりそうです。

今後について

帰国後は元の部署に戻り、とある研究開発テーマを率いています。優秀なメンバーと一緒に技術を深めながら、量産や参入障壁といったビジネス化するための課題にも挑戦中です。

また、留学で学んだこれらのデザイン手法については現場でも活用できるようにと色々な人に協力をいただきながら、社内で講師をしながら仲間に共有したり、私自信も振り返りながら理解を進めているところです。

これらについてはこれからも色々としかけていきたいと思っています。

特にPeople Centered DesignについてはCIIDの様なデザインファームで行うのと、日本の大企業で実際使える手法として展開するのでは、求められる機能や制約等も多少は異なってきます。今後も色々とトライしながら学んでいきたいと思います。ビジネス領域やComputer Human Interactionの分野ではデザインは既に普及しつつありますが、材料やデバイスではまだマイノリティなので、いつかデザイン手法を活用した雛形として取り上げられるようなやり方に発展していけると良いなと思っています。

また、私事になりますがインタラクションについてもっと深く学びたいと思い、社会人博士コースを受験いたしました。留学の後半から一番学びたかった先生にコンタクトをとり、なんとか受け入れ許可をいただきました。幸いにも秋入試の考査にもパスしたので春から社会人ドクターとして夜間や週末を利用し、二足のわらじで活動する予定です。今年はメインの仕事もかなりハードになりそうですが、幸いにも家族の理解も得られたので体調を崩さない様に気をつけながら新たな挑戦をしていきたいと思います。

留学は終わりましたが、まだ書きたい内容も多く、定期的にみてくださっている方もいらっしゃるようなので、今後も少しずつ更新していく予定です。

末筆となりましたが、今年もよろしくお願い致します。

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