留学するまでに考えたこと

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留学するまでの振り返り

ご無沙汰しております。ずいぶん更新が空いてしまいました。ここ最近引っ越しや出張が複数入っており非常に立てこんでいました。なんとか自分のアパートに入ることができ、本日インターネット環境も整いましたので久々に更新したいと思います。

最近、ブログやFacebookページを通じて、留学先の選択理由やそのときに考えた事等を質問される機会が何度かありました。せっかく振り返りの機会をいただいたので、自身が留学前に考えた事を記事としてまとめたいと思います。今回の前編では留学の方向性を決めるまでの経緯と考えた事等を紹介します。今後留学される方の参考になれば幸いです。

社費留学 について

私の場合は、企業からの派遣留学(いわゆる社費留学)という形で来ております。また私の場合はいわゆるMBA留学ではなく、エンジニアが主に技術について学ぶテクノロジー留学と呼ばれるものです(そのため本エントリーは技術者の留学という点から書いています。)。社費留学が普通の留学と違うのは主に下の2点かと思います。

  1. 会社としての投資価値の視点
  2. 企業の信頼と制約
  3. 経済的な猶予

はじめに社費留学を考えられている方が考えるべきことは、一番上の部分かと思います。普通に考えると当たり前なのですが、社費留学は会社からみると集中投資になります。そのため選出対象は費用対効果が期待される人になります。
これは言い換えると会社の通常業務において一定上の成果を出すこと、会社にとって重要な問題意識を持っている事、それを解決するための素地(英語、スキル面、調査状況等)と具体的な計画を示せる事等が重要かとおもいます。
また、この意識を持たないといかに優秀な方でも選考に通らないかと思われます(留学先側での選考はまた別問題)。

2つ目は企業名による信頼と制約についてです。会社推薦であることから留学先からある程度の信頼が得られるケースがあります。一方で知財等の契約は多くの場合は大学側に帰属することになるため、現業と近すぎる内容は取り扱えない等、研究テーマが制約されるといった場合もあります。また、各企業のプログラムの趣旨により留学先の候補や期間、帰国後のキャリアパス等について決め事があるケースが多いので、その点については良く確認しておく必要があるかと思います。

企業からの留学の場合、受験費用や滞在中の補助、給与といったサポートがある場合が多いです。通常は1年滞在すると1000万くらいの出費をトータルで支払う事になり、これ自体が留学の負荷になるケースも少なくありません。
また、私費で行かれる方は帰国後のキャリアプランについても考える必要があるため、就職活動にも時間を割かなくてはいけない場合もあるでしょう。社費留学はこういった部分の負担が少ないため、参加者にとっては大きなギフトになります。

これらの内容は一長一短なので留学を希望される方は目的に合わせてどの様な可能性があるか考えるとよいかと思います。

留学を考えたきっかけ

ここからは私のケースを紹介します。どんな問題意識を持っていたか、それに対してどの様な選択肢が合ったか、そして最終的にはどの様な判断で方向性を決めたか、これらの経緯を紹介します。これらの留学のきっかけは千差万別で非常に面白いです。私も他の留学生にお会いした際には、できるだけこの背景を聞くようにしています。
(もし留学の背景についてシェアしてくださる方がいらっしゃれば寄稿記事をかいていただけると嬉しいです。協力してくださるという稀有な方がいらっしゃればコチラにご連絡ください。)

エレクトロニクスビジネスの今後

私は入社以来、1つの研究所でずっと研究業務をおこなってきました。そんな自分が会社の事業領域であるエレクトロニクス分野について次の様な事を感じていました。

1.相対的価値の低下

2.イノベーションのジレンマ

1はいわゆるコモディティ化の話です。商品の性能が上がり、技術自体が普及してきた状況では利益がでなくなります。この様な状況ではいわゆる水平レイヤーマスターと言われる、バリューチェーン中の重要領域の覇者が利益の大部分を獲得し、他のプレイヤーはレッドオーシャンの中で厳しい戦いを続けていく事になります。

私の専門の材料、デバイス分野ではいわゆるコア材料、デバイスやモジュールを性能(もちろんコストバランスを含む)で圧倒したプレイヤーがその商品を外販し、他のプレイヤーはそれを購入する。商品が売れる程モジュールサプライヤーは儲かるが、他のプレイヤーは残りの利益を厳しい競争の中で利益を奪いあうという図式になります。

実際に私の会社も売上高が伸びても利益が低下するというパターンも多く見られる様になっていました(もちろん各事業により違いはあります)。これは顧客にとっての会社の価値が相対的に低下している事を意味しているので、強い危機感を感じていました。

もう一つはハーバードビジネススクールのクリステンセン教授が提唱して以来、色々なところで題材になっている「イノベーションのジレンマ」のお話です。

大きな企業にとっては新しい技術や市場がとても小さく映り、その技術が既存のビジネスとカニバリズムを起こす可能性等があることから着手に遅れます。しかし、その技術が成長していき、顧客の要求をより安いコストで満たす様になる、あるいは顧客の別の需要も満たした場合には技術の置き換えが起こります(破壊的イノベーション)。この大きな企業がその特性ゆえに破壊的イノベーションに対して無能力になる現象はイノベーションのジレンマと呼ばれています。

この現象はまさに大きな企業で研究をしていると感じる部分でした。いかにそういった破壊的イノベーションのシーズを拾い、育てていくかは今後の自分の会社にとって非常に重要なテーマと感じていました。

自分に何ができるか

上記の問題意識の中で、自分に何ができるかというのは日々考えていました。大きく分けて次の2つの方向性を考えました。

  1. 専門性を伸ばし、コモディティ化の競争の中で覇権を握るための研究開発の重要な戦力になる
  2. イノベーションのジレンマを打ち破り、大きな企業の中で破壊的イノベーションを起こす原動力になる

この2つを行っていくために必要な能力をいかに伸ばしていくかを考えた時に、一流の環境でスキルを伸ばせる社内留学という制度は非常に魅力的に映りました。

軸足をどこにおくか

私がこういった事情の中から留学を考えた際に、自分の問題意識のうち、どちらに軸足を置くかは大きな悩みでした。(ちなみに1と2は必ずしも二律背反ではありませんが優先順位はつけられます。)テクノロジー留学をした多くの仲間達はそれぞれ問題意識を持っていましたが、多くの方はより1の方向性(専門性の強化)に近いと感じました。

私の場合は、この悩んでいる期間に実際に留学された先輩方にお会いしたり、自身の中で振り返りを行いました。最終的に私は2の内容に軸足をおいて留学先を探す事になりました。その時に重要視した点は以下になります。

帰国後も活用できる”なにか”が得られるか

私の会社の留学期間は一年間です。また、上で述べたように直接、現業に近い内容は取り扱えないという制約があります。そして材料デバイス系の特殊技術は装置と紐づくことも多いため、その技術が特別である程、深く学ぶための時間が足りない、または知財や装置の制約により直接実施できないというジレンマがあります

“活用できる何か”が直接の技術ではないとしたら、他に何があるでしょうか。私は色々な方の経験段を聞く中で主に次の3つだと考えました。“一流の環境で学ぶ経験”,これに加えて“人脈”,“知財権や装置制約のない特殊技能”が重要と考えました。

【Questions】

ある分野において一流の環境か

帰国後も続きそうな人脈が築けそうか

ポータブルな特殊技能(あるいは特殊ではなくても重要な技能)が身につくか

もう少し掘り下げるとそれぞれどうやって調べるかという問題もでてきます。(この辺りは後編で書きたいとおもいます。

客観的な投資価値の分析

先ほどまでが”なぜ留学したいのですか?”という質問だとすると次は”なぜあなたが適任ですか?”にあたる部分です。社費留学だけでなく、私費留学の場合にも重要な問いだと思います(キャリア構築の観点から)。

私は「専門性を深化させる方向」と「イノベーション創出へのチャレンジ」という2つの方向性がありました。そのためマテリアルサイエンスやデバイスの専門領域の研究を行うという選択肢も考えました。この選択で得られるものは大きいと思いました。

一方で、私の職場は博士号取得者も多く(私は修士卒)、客観的に会社の投資対象としてみた時には、専門性の特化に投資する対象には、より適任の方がいると考えてしまいました。この適任者問題は選ぶ研究テーマによって、ある程度回避できるのですが、その様な特殊技能習得の成果が会社の求めているタイムスケールと合わなそうというのも、私の場合はネガティブに働きました。

もう一つのイノベーション創出へのチャレンジという項目については、お恥ずかしいながら、留学検討初期の段階だと、どの様な場所でその様な内容が学べるのかわかりませんでした。というのもその様な人材に求められるスキルセットやディシプリンが当時の私にとっては未知の領域であったためです。

しかし、未知ということは、当時の身の回りにはその様な経験をした人がいなかった事を意味します。自分の大切だと信じる内容で、人と異なるキャリアを築ける可能性があるこの選択肢は魅力的だと感じました。

ここから自身にとっては未知の領域に対する探索がはじまりました。この先については後編に書きたいと思います。

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