ポータブルスキル について考える

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ポータブルスキル について考える

 月日が立つのは早いもので、早くも約一ヶ月が経過してしまいました。全くの畑違いの領域に突入して、非常に刺激的な期間を送っています。少し様子が分かってきたところで、こちらに来てから役に立ったスキル等についてまとめてみたいと思います。今後デザインスタジオ/スクールに行く人の参考になれば幸いです。


ポータブルスキル とは?

 ご存知の方もはじめにポータブルスキルという概念を紹介します。

ポータブルスキルとはその名の通り持ち運びできるスキルを意味します。例えば分野(業界)、扱う仕事内容、職場の設備、周りのメンバー・・・etc.と様々な要素が変わった場合にもどんな仕事や職場でも活用できるスキルの事を意味します。

専門性の様なものもあれば定量評価しにくいリーダーシップ、洞察力、判断力等の様なものも含まれます。

このポータブルスキルはある意味私達一人ひとりの市場での価値にも直結する部分でしょう。私は現在の会社以外は経験したことがなかったので、ある意味今回自分の持っているスキルセットを初めて客観的に評価できる様な機会を得たかと思っています。

今回は比較的客観的に評価しやすいポータブルスキルに絞って感じたことを書いてみます。


エンジニアが抱える悩み

悩み 

(Image via Flickr)

はじめに私自身が抱えていた悩みを少し紹介させてください。エンジニアや研究者が抱える悩みとして「どの様なスキルを伸ばすべきか」は大きなトピックの1つかとおもいます。

よくあるパターンとしては業務内容の専門性が非常に強いケースです。この場合は「こんなマニアックな事が何かの役に立つのだろうか」という悩みを抱える場合があります。その技術が必要とされていれば良いのですが、時には時流の変化によってそのスキル自体の価値が損なわれていくこともあるでしょう。

関連する話として、先日ものづくりのワークショップを担当されている方と雑談していた時に次の様な事を聞きました。

「2009年頃からデジタルファブリケーションの機器がより一般的に普及してきたことで従来のものづくりで扱っていた一部の機器はほとんど使われなくなり、デザイン分野におけるプロトタイピングにおける必須スキルが変化している。」

 もちろんその技術がすぐに世の中から必要とされなくなるわけではないでしょうが、逆らえない大きな流れはあるのかなと思っています。

もう一つよくあるパターンが実際の作業の部分は外にだし、自分は指示と進捗管理を行うというものです。この場合は「こんなことしていてスキルが身につかないけどいいのだろうか」とまた別の悩みを抱えることになるかと思います。

 現在の様に変化が激しい時代の中ではどの能力を伸ばしていく事にリソース(自分の時間)を費やすかは非常に重要なテーマかとおもいます。

 私は大学卒業から今まで一貫して材料・デバイスの研究開発業務に従事してきました。そんな自分も上の2つの他に次の様な悩みを抱えていました。

  • 他分野のレベル感がわからない
  •  普段関わっていない技術領域に関する常識が、どの程度あるかがわからない状況でした。異分野の人と一緒に働く中で基本的なコミュニケーションがとれるかが疑問でした。

  • 自身の専門知識が他から必要とされるか
  •  これは自分の関わっている材料・デバイスの知識というものが他分野の人にとって必要とされる場合があるのかという疑問です。これは働く場所によっても変化するでしょうが非常に興味のある部分でした。

  • スキルと設備がリンクする
  •  これは参入障壁にもなっているのですが、材料やデバイスの開発は個人ではできない特殊な機器や施設が必要な場合が多いです。これは裏を返すと自分が他の場所に移ったときに、その設備がないと同じことが再現できないことになります。この様な設備にリンクした知識が外に出た時にどの様になるのかはいまいち想像できていませんでした。

 今回はこれらの点を踏まえて実際に感じたことを書き残したいと思います。


デザインスタジオで役に立っているスキル

はじめに、自分がこれをやっていて良かった or もっとやっておけば良かったと具体的に感じるスキルについて紹介します。


SKILL


何はともあれ語学

 いきなりそれか!と突っ込まれそうですが、一番重要かと思います。私は正直いうと今になって英語力不足のツケを払っている段階です。約一年前にTOEICが800点台、まずいとおもい、その後も半年間程度、英会話教室に通いましたが、実際にNative Speakerが雑談しだすと会話をフォローしきれない場合が多いです。現在はこの英語力が圧倒的に不足しているので、チャンスを逃さないためにも日本にいるときの3倍くらいのペースで勉強中です・・・(上達の実感はまだなし・・・)

 過去にも海外の研究機関で2ヶ月程度働いたことがありましたが、その場合はテクニカルタームなどが多かったので特に問題なくコミュニケーションを取ることができました。しかし、デザインスクールの場合はユーザーへのインタビューやコンセプトのアイディア交換等を頻繁に行うためより高度な英語力・コミュニケーション力を要求されると感じています。MBAに行かれる方と同等程度の英語力が望ましいのではないでしょうか。


0と1は大きく違う

 私はガジェットのニュースやらテクノロジーは結構好きなタイプだったので入社してから常に何かしたの勉強を同期達と続けていました。そこで学んでいた内容は、教科書とかを中心にほんのすこしかじった程度でしたが「0と1は大きく違う」ことを感じています。具体的には次の内容はそれなりに役になっています

  • 電気回路の知識基礎
  • 何かプロトタイプを作るときにこれらの基礎知識が必須

  • Arduino等のPhysical Computing基礎
  • 上記と同様

  • CADソフトの使用経験
  • 3Dプリンタやレーザーカッターを使う際に必要。知らなくても覚えれば大丈夫かと思います。知っているとスムーズに作業に移れます。

  • プログラミング基礎
  • Physical Computing等と合わせてプログラミングも良く使用しそうです。

  • Adobe softwareの使用経験(Illustrator, Photoshop, Premiere pro)
  • ビデオの編集やイラストを書く機会は多いです。

  • Interaction Designの基礎(Design Thinking の基本的な考え方等)
  • 基本的なOSという感じ

  • Webの基礎知識(HTML, CMS soft, データベースの概念等)
  • サービスの内容等について議論する際にこれらの知識が合ったほうが好ましいとかんじました。

 これらの知識があったおかげで、職場のメンバーとのコミュニケーションの最低限の共通理解については特に壁を感じることがありませんでした。

プライベートでMacを使用していた事が思わぬ形で役に立っています。デザインスタジオのせいかほとんど人がMacを使用しているため、ソフトウェアのマニュアル等も基本Mac様に書かれている場合が多いです。また、USキーボードにしていたことが思わぬ形で役にたっています。USキーボードは役に立つことはないかとおもっていましたが、メンバーと共同作業をする機会も多いです。今後海外で仕事をする可能性のある人はUSのキーボードを強くおすすめします。

 ちなみに上記に上げた私の知識はその気になれば非常に短期間で習得できるものがほとんどかと思います。ただ来てから実際にこれらの内容を全部時間をみつけてやるのは困難かと思います。いままで役にたったことはあまりなかったのですが(完全に自己満足の趣味だったので・・・)今回思わぬ形で助けてくれたと感じています。

ぜひとも興味のある技術は損得ではなく日々積極的に触れる様にしておくと良いかとおもいます。

これらの経験を通じて上の「他の技術のレベル感」という疑問は自分のこれまでのスタンスで最低限の会話ができるというところで少し安心しました。(最低限の会話ができれば必要なリソースを協力して集めたりするアクションがうてるので・・・)


マテリアル分野のスキルの実際について


Win-Winな関係を作る

自身の専門性であるマテリアル分野の知識について書きたいとおもいます。結論からいうと予想以上に役に立っています。私は正直Material Scientistとしてはまだ半人前ですが、現在CIIDにはMaterialバックグラウンドの人がいないため、この領域においては一番詳しい人になっています。上に上げた基本的な浅く広い知識の他に、どこか1つでも自分が他のメンバーより詳しいものがあるというのはとても重要かと思います。

 実際に学生さんやResearchのメンバーもそれぞれがどこかに強みを持っています。人によってはそれがダンスに関する知識だったり、プログラミングだったり、心理学だったり・・・きっと内容自体はなんでもいいんだと思います。(もちろん多くの人が興味を持つ内容だといいのですが)

 与えられるだけでなく、こちらからも情報を与えることで良い関係を築いていけるのかと感じました。実際に学生さんから「ファイナル・プロジェクトに◯◯の材料を使いたいんだけどどこで買えるの?」とか「こういうアイディアを実現するよい材料技術知らない?」といった具合に色々な相談をいただけるようになってきました。逆に私も彼らから設備の使い方を教えてもらったり、美味しいお店の情報をいただいたりしています。

Material分野の知識はInteraction Designを扱うCIIDにおいては現時点では思ったより引きが強いと感じています。これはCIIDがTangibleなアウトプットを重視するカルチャーをもっているからかもしれません。


Material分野のポータブルスキル

 実際にマテリアルの実験も少しずつですが始めました。最初の危惧の1つであった設備がないと何もできないのではないか、という悩みはいまのところなんとかなっています。どうやら人間は環境に順応するようで、設備がないならあるものでどうにかしようという力が働くみたいです。

ビーカーの代わりにテキーラを飲むショットグラス(プラスチック製)をつかったり、スプーンの代わりにストローをカットしたり、鋳型の代わりにレゴブロックを使ったり・・・・勿論本格的な化学実験はできないのですが、その分目的をDefineして検証するべき項目をしぼり進めています。

実験セットアップ

手作り、ローコスト実験セットアップの様子

自分では気付かなかったのですが、この様な力技をするときにどうやら普通のセットアップで使用した経験があるかどうかがけっこう重要なようです。まったく材料に触ったことがないとどのようなもので代替できるか、検証項目をどのように絞り込むかが難しいみたいです。この様に感じることができたのは大きな収穫だったとおもいます。

この辺りはかなり涙ぐましい努力をしながらメンバーと進めているので機会があれば別記事で紹介したいなとおもいます。


まとめ

 最期に内容を簡単にまとめます。


CIIDで気づいた大切な事(スキル面)

 マインドセット的な部分等はまだ議論できるほど経験をしていないのでまた別の機会に書くとして今回は具体的なスキルについてのみ書きます。

  • 語学をしっかり磨こう。
  • 浅く広くでも良いので色々な技術を知ろう(会話のベースとなるかも)。
  • 自分の強みを持つと良い関係を築きやすい。
  • 環境が変わることで見えてくる強みもある


今後学びたいこと

 今後はチームプロジェクトの中で彼らのマインドセットを感じていきたいとおもいます。同時に”かじっていただけの技術領域”をもう少し使えるレベルまで伸ばしつつ、この特殊な環境でどこまで材料の可能性を追求できるか挑戦していきたいと思います。

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