ユーザーリサーチ の現場-共感と背景を知る事の意味について

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ユーザーリサーチ とは?

 ユーザーリサーチとは文字通り、ユーザー自体を知るための活動です。定義によってはマーケティングリサーチの中にもこの様な活動は含まれるのでしょうか。デザインアプローチではこのユーザーリサーチをとても重視しているようです。ユーザーリサーチについては既に多くの専門家や有識者の方がその意義を説かれています。その様な状況で少しかじった私が一般的な話を議論してもしょうがないので、今回はこの手法に対して門外漢である私がなぜこのユーザーリサーチに意義を見出したか、実際体験してみてどう感じたかという視点でまとめたいと思います。


ユーザーリサーチ の意義について考える


環境の変化から感じた分析アプローチの限界・・・・

 私はこれまで日本企業の中でも特に分析を重視する半導体デバイスの文化でこれまで仕事をしてきました。この分野の意思決定はこれまでは上記の分析結果によりかなり明確に定められてきました。

 主な特徴は次の様なところでしょうか。

  • 求めるターゲットが明確である
  • 定量的に議論できる
  • 業界のロードマップが定められている
  • 各エンジニアは己の専門領域に注力する。
  • 競争ルールは設備と科学的な検証アプローチ
  • マネージャーはその各要素が機能的に結びつく様に管理を行う。

 しかし、これらのルールは時代を経て少しずつそのルールが変わってきているように思います。例えば半導体を1つ例にとっても微細化という1つの競争ルールから物理的な限界が見え始め、新しい軸を探す必要がでてきました。デバイス単体の開発からそれをどの様に使うか、モジュールにしていかに付加価値を加えるか、これまで以上に考える事が増え、取りうる選択肢も多様化しています。

 またデバイスというサイロからでてみると単体の製品どころかそれらがネットワークを通じてサービスという大きな枠組で考える必要もでてきました。この様な中で単体の技術での最適化を考えるだけではビジネスとして立ち行かなくなっている閉塞感を感じる様になってきました。


新しいパラダイムの中で考えるべき事

 この様な環境の変化の中で私達はどんな事を考えていくべきでしょうか。まだ求めるべき特性が明確な物についてはこれまでのアプローチがある程度通用するでしょう。しかし性能がある一定上になったときにエンジニアが行うべきことは機能の向上・付加だけではなく、ユーザーにどの様な体験を提供していくかについて考えることではないでしょうか。

 この様な人とモノ・サービスの関連性をきちんとデザインしてあげる分野が当ブログでもタイトルとして扱っているインタラクションデザインという分野だと私は認識しています。

 この様なインタラクションデザインを考えるときに従来と異なる特徴としては次の様なものがあると思います。

  • 求めるターゲットが最初の時点で分からない
  • 業界のロードマップはなく、カオスの中から急遽劇的な変化生まれる
  • 各エンジニアは自分の専門技術だけでなく、他の技術との関係性にも注目する必要がある
  • 競争ルールはいかにユーザーの心の琴線に触れる商品・サービスを作れるか。
  • 管理ではなくユーザー、各分野の有識者のコラボレーションが重要

 この様な世界にシフトしていくのだとすると今後エンジニアやデザイナーに求められるスキルセットも変わっていくように思います。


ユーザーへの深い共感が進むべき方向を決める

 それではこれらを踏まえた上で何故ユーザーリサーチを重要と考えたかについてもう一度考えてみたいとおもいます。

 先ほど、新しいパラダイムの中での競争ルールは”ユーザーの心の琴線に触れる商品・サービスを作れるか”だと述べました。これを得るにはどうすればよいのでしょうか。

 一番確実な方法が自分自身がその商品・サービスを提供される顧客である場合でないでしょうか。

 つまり自分が顧客ならその商品に本当に魅力を感じるかが明確にわかるということです。1つ難しいことはこの魅力を感じるかどうかも文章等ではなく本当に商品として手に触れて、実際に使わないとユーザー自身も中々わからないというところでしょう(この部分がCIIDでももう一つの柱であるPrototypeの文化につながりますが今回は割愛します)。

 ユーザー自身ですら使わないと分からないようなものを外部の人が予想することは当然困難になります。それを解決するためにユーザーの声を聞くといった活動はこれまでに行われてきました。

 しかし、ユーザーの声を聞くという活動は具体的なアイディアに落とし込む事がなかなか難しいと感じています。私自身も企業内でヒアリングやアンケート等を行ったことがありますが、これらの活動で正しい質問をすることが中々難しいのです。表層的な情報をとることはできてもその質問の回答=この製品という図式は成り立たないことが多いです。具体的なアイディアや要求がでてくるのはおそらく従来のケースかあまりに当たり前だが技術的にものすごく困難という場合が多いです。

 ユーザーリサーチはこれらの状況を打開する1つのアイディアだと私は思っています。具体的にはユーザーの考え方、背景のコンテクストを様々な手法でくみ取り、まず自身がユーザーに対して深い共感を得ることを目指します。その上で具体的にユーザー視点をもった自分が欲しい、必要としている事(インサイト)を得る事で進むべき方向を定め、その仮説検証を行うというやり方です。

 この方法は厳密にはユーザーにはなれない開発側の人間ができるだけそこに近づき、自身の発想力を持ちアイディアを作っていく考えです。共感というと一見曖昧な表現にも聞こえますがこの様に考えるととても論理的なアプローチかと思います。


 ユーザーリサーチ の現場


綿密な準備の存在

 それでは実際にユーザーリサーチの活動で高い評価を得ているCIID等のグループはどの様にこれらの活動を行っているのでしょうか。

 はじめにヒアリング先に行く前にできるだけ想定される状況を洗い出します。どの様にすれば彼らをより深く理解できるかについてこれまでの多数のユーザーリサーチ経験から検討します。今回の場合はツアー形式で実際にヒアリング先の生活空間を共有しながら学ぶスタイルを採用する事にしました。これらには決まった形式はなくその目的達成のために各々が意見を交わしながら決めていきます。

 この様にして作成した想定インタビュー内容を元に自分たちで仮想のインタビューを行いました。実際にビデオを回しながら想定質問をぶつけて回答をしたり、クライアントの一年間をタイムスケジュールに書いてもらいながらその内容を一緒にトレースして議論したり・・・etc. それらの様子を第三者視点で同僚が記録し、後でビデオの内容を振り返り、重要な質問の確認やさらに追加するべき項目等の検討を行います。


背景のストーリーまで調べるユーザーアプローチ


今後も続く関係を構築する

 これらの事前検証・実践を経て当日を迎えます。当日は何度か行われた自分達のフィードバックを元に、限られた時間内で行うユーザーリサーチの内容を決めて、クライアントにきちんと許可を得た上でリサーチ活動を開始します。

 1つ印象的だったことは最初にクライアントさんに向けて次の様な事をすごく丁寧に説明していたことでした。

  • 私達はどういう人達か
  • 何のためのリサーチか
  • この活動は何に使われるのか
  • どういう結果を後で共有するか

 同僚に聞きましたが、この部分をいかにきちんと伝えて距離を縮めることでよりリアルなクライアントの声を拾い、今後も続く関係を構築していくとのことでした。私達のクライアントさんからは時々こういうリサーチの依頼がくるけど何がしたいのかわからない場合も多く、その後どう使われるのかも分からない場合が結構ある。という旨の事をおしゃっていたのでこのプロセスは本当に大切だとおもいました。


柔軟に対応しながら背景のストーリーを読み取っていく

 そしていよいよインタビューとツアーを開始します。アイスブレイクの後、聞きたい内容を少しずつ掘り下げていきます。このインタビューで私が所属している組織と根本的に異なる思った点が幾つかありました。

  • 関係者の名前、性格などについて聞く
  • 身の回りにおいてあるもの、その理由について聞く
  • 主観的部分をものすごく掘り下げる

 それぞれに着いて簡単に説明します。一つ目に驚いたことは一緒に働くひとの名前やその人の性格、バックグラウンドについて雑談の中で広げながら聞いていきます。これは彼らが実際にどの様な人たちと働いているか、そこから起因する特殊な理由がないかを読み取っているようでした。

 2つ目はおいてある様々なモノについて訪ねていることでした。例えば入退室管理の台帳やら、使っている機具、ツール、その選定理由。他にどういう可能性があり、なぜそれを選んだか等などです。これを聞くことで彼らの物事の判断基準の一端を垣間見れるとのことでした。

 3つ目は主観的な部分についての掘り下げです。私はこれまでのヒアリングではあまりこの様な部分を掘り下げたことはありませんでした。答える側も主観ではなくできるだけ客観的な事実にもとづいて回答しようとしてくださる方多かったです。それに対して今回のインタビューでは”あたなはどう思うか?”、”あなたはどう考えるか?”といった視点での質問が非常に多かったです。これらの活動が彼らの価値観を理解していく上で大きなヒントになるのかもしれません。

 結局はユーザーリサーチにおいて現場が重視していたことはいかに彼らの考え方を理解するかということでした。そのためには背景のストーリーを捉え、主観を聞くことがとても重要というCIIDのスタンスを今回は感じることができました。思ったより人間的な部分が多く非常にエキサイティングな体験でした。


今後のプロセス

 今後は今回得た情報を分析、整理し、アイディアを出しあうそうです。そこからカスタマーインサイトを得て、プロトタイピングとして検証していくフェイズへと移行していきます。これらの過程はIterativeなものになるため今後も回していくことになるでしょう。

 個人的には実際にユーザーリサーチに参加することでこれまで本等では理解していたことを直接体験できたことは非常に大きかったです。この範囲を狭く、深く掘り下げる様なアプローチが広く受け入れられる商品やサービスに本当につながっていくかが非常に興味深いです。また私がこれまでにさんざん会社でいわれてきた採算性やビジネスとしてのサステイナビリティ(技術的な参入障壁など)をどのように扱っていくのかが今後気になっています。

 最終的にでてきたアイディアが自社ではできない事、ビジネスとして成り立たない場合も多いかと感じているからです。一方でテクノロジー起点でスタートすると純粋なユーザーリサーチから遠ざかる・・・このジレンマをいかに解決していくかが1つのキーになると思っています。長文をお読みいただきありがとうございました。

訪問先のクライアント様からいただいた本

2014-09-06_07-04-04

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